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スポーツレベルアップシリーズ 上達する!柔道

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「実戦に即した基礎」の分類解説を試みた網羅的指導書の秀作

著者:池内貴憲
対象者:初心者・中上級者・指導者

出版社:ナツメ社
出版年:2006年
ページ数:231


Book Review
昭道館池内道場第4代目館長で、松前柔道塾・鈴木道場での指導歴もある池内貴憲五段による初心者指導書の秀作である。

現在、指導書の性格は「基礎技術とされてきたもの」「競技柔道の実情に即した解説」という2つの要素のせめぎあいで決まる感がある。
本書は、網羅的な基礎指導書としても非常に優れているが、特に後者の分類解説にかなりの力が割かれている印象だ。

たとえ試合で頻繁に見かける技でも、従来は基礎とされていなかった技は、その入り口としての初歩的な掛け方が書籍などに記載されていない場合が多い。こういった技に関しても、著者は野心的に分類を試みている。

たとえば、袖釣込腰。どれがスタンダードな掛け方かはまだまだ指導者の中でも意見が割れている技ではないかと思うが、本書では「基本的なタイプの掛け方」(袖を高く前に釣り上げていく)の他に、「別タイプA 軽~中量級向け」(相手の横に踏み出して袖を横に押し出す)、「別タイプB 軽~中量級向け新バージョン」(袖を下方向に押し込む)、さらには、「女子柔道の袖釣込腰」(腰を低く落として引き落とすように投げる)と合計4タイプが示されている。どれも基本的な掛け方であるが、これを分類解説した指導書は初めてではないだろうか。

たとえば、肩車。もちろん、投の形のように高く担ぎあげるタイプの掛け方ではなく、実際の試合で見かけられるように相手の懐に潜り込むような掛け方である。これを解説するだけでも従来の初心者指導書にはあまりなかったことだが、「自身の頭を引き手側の脇の下に入れるタイプ」「釣手側に入れるタイプ」「女子柔道の肩車」(男子と掛け方は同様)と複数の基本的な掛け方を解説してくれている。

掬投も、実戦で使用される「前に抱えあげる」タイプ2種類の解説、出足払も「下がる相手に掛ける」ことを基本として紹介するなど、とにかく、「実情に即した基礎」を解説しようとの意気込みが強く伝わってくる。

もちろん、従来、基本とされてきた技もしっかりと解説され、「別タイプ」「実戦に役立つポイント」など分類的にも実践的にも役に立つ情報が満載である。また技によっては「関節が柔らかい」「筋肉量が少ない」女子選手の特性に合わせた掛け方もバリエーションとして解説されており大変有用。

レイアウトは、写真をふんだんに使用し、直感的で非常に見やすい。
柔道指導書は、2005年の名著「一本をとる!柔道上達BOOK」(小俣幸嗣)の出版以降非常にビジュアルに力を入れるようになったのではないかと思うが、本書のレイアウトにも、参考文献にも挙げられている「一本を取る!・・」の影響が見て取れる。こういう相互影響は大歓迎したい。

同じく優れた初心者指導書ではあるが、近年出版された初心者指導書の代表格である「一本を取る!柔道上達BOOK」や「ジュニアのための考える柔道」(向井幹博・山口香)とは明らかに匂いの異なる一冊である。

本書の著者は東海大卒、他2冊は筑波大卒であるという見方をすることは簡単であるが、そういった出身の違いというようことではなく、基本の掲載として何を志向したかということであろう。
本書は成年の初心者に向いており、他2冊は中学生以下の読者をも包括して想定したといえるかもしれない。

最初の一冊としてどちらを選ぶか、これは全くの好みの問題であろうと思う。
評者としては、もちろん多くの指導書に当たってその中で自身の考えをみつけるべきであると思うので、傾向の異なる良書が複数存在するのを幸い、もちろん両者の購入をお薦めしたい。


投稿者:運営者


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