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書評「柔道えほん『ミッチのあいことば』~ある じゅうどうのおはなし~」

普及ツールとしても最適、ぜひ子どもたちに手にしてもらいたい佳作
柔道えほん『ミッチのあいことば』~ある じゅうどうのおはなし~

ぶん・え わたなべ ちはる
げんさく ばんどう まゆこ、こんどう ともこ

※ eJudoメルマガ版11月29日掲載記事より転載・編集しています。
書評「柔道えほん『ミッチのあいことば』~ある じゅうどうのおはなし~」
普及ツールとしても最適、ぜひ子どもたちに手にしてもらいたい佳作
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ぶん・え わたなべ ちはる
げんさく ばんどう まゆこ、こんどう ともこ
言語:日本語、英語、フランス語
判型:A4変形
価格:1,000円+税

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【あらすじ】

ミッチは柔道が大好きな女の子。お友だちのまことくんと【あいことば】を言いながら稽古に励んでいます。
ある日。ミッチは不思議な体験をします。そこでミッチが気づいたこととは・・・?

【書評】

「精力善用 自他共栄」の理念を、絵本らしい、やさしい表現で描いた作品。文章はひらがなとふりがなつきの漢字、大人が読み聞かせてあげても良いし、ひらがなが読める子どもは一人で読み進めることもできる。
まず、絵本として間違いなく良い出来。あらすじは実際に読んでもらうとして、筆者が思うこの作品の良いところをまず“柔道側”の視点から挙げさせて頂く。少々無粋かもしれないがお許し願いたい。

・絵がかわいい

大事なこと。入り口として魅力的なビジュアルを用意したことは素晴らしい。柔道業界の人はとかくビジュアルに弱く様々な場面でこれが壁となって来たが、このステージを一気に跳び越えている感あり。普通に読み物としてセンスが高い。

・楽しく、おしつけがましくない

もっとも語りたいはずの「精力善用、自他共栄」が既に柔道世界にあまねく浸透した価値観として描かれていて、あたりまえのこととされているがゆえ、読む側にも受け入れやすい。言うべきことを声高に主張するのでなく既に「それがある世界」として描いたのは素晴らしいし、フィクションとしての地力が高い。この不思議な説得力の高さ、実は多言語併記(英語、フランス語、日本語)であることが非常に大きいとみる。日本語だけでこれを描くとどうしてもおしつけがましくなってしまう、あるいは現実世界が決してそうなっていない(残念だが)ことに読者が嘘くささを感じてしまうのではないかと思うのだが、英語やフランス語が一緒にあることで、「柔道は、世界では当たり前のようにこう認識されている」と感じてしまえるのだ。逆輸入が生み出す普遍性とでもいおうか。楽しいと同時に、背筋が伸びる気すらする。

・世界観が素晴らしい

この「既にあるものとして描く」ことをうまく使って作り上げた世界観が、実にいい。たとえば先生が女性で、年配であること。道場が当たり前に市井の生活の中にあって、親がやさしい目で頑張る子どもを見つめていること。競技的な強さではなく、柔道を楽しみ「精力善用 自他共栄」を学ぶことが、あたりまえにいちばん大事なことにされていること。次に柔道が目指さねばならないステージが実は余すところなく表現されていると思う。ピンチを、相手を倒すことでなく「この言葉と実践」が救うところなどは心に染みる。

ともろ手を挙げて「良いところ」を挙げてきたが、次に、柔道側の視点を超えた「絵本」評としていくつか。

子どもたちは、実は日常道徳的な規範を刷り込まれる機会が多く、彼ら彼女らにとっての「えほん」は実はむしろそれを壊すもの。そこが魅力であるはずだ。「柔道」という普段自分たちがなかなか触れない珍しいものであるという題材自体の力、ビジュアルの魅力などでかなり救われてはいるが、起承転結の「転」の部分に、この作品が周到に避けようとしたはずの押しつけがましさがどうしても漏れてしまっている気がする。相手を倒すことでなく「精力善用 自他共栄」の心があることで大団円を迎えるという「結」は柔道的な規範を抜きにしたストーリーとしても十分面白いのだが、この「転」の部分で子どもの集中が削げてしまうのではないかと一抹危惧を感じた。もうすこしこの部分を短くしても良かったし、読み聞かせに際してはここに演者の「力」が要る、とも言える。

いずれ、子どもが柔道を学ぶことの素晴らしさをアピールするものとしてはこれまでにないツール。これを言うのはどうにも気恥ずかしいのだが、作品に、柔道と子どもたちへの愛があふれている。そして色々言ってきたが、この作品の評価は実にこの一言に尽きると思う。

ぜひ、指導者の方々には子どもたちの副読本として使ってみて欲しいし、地元の幼稚園や保育園にも置いてもらって欲しい。

そして。おそらく初めて読んだ子どもや親御さんは、このえほんを面白がってくれるかどうかを超えて「『精力善用、自他共栄』が既に柔道世界に浸透しきった普遍的な価値観であること」を刷り込まれてくれるものと思う。保育園でこれを読んで道場の門を叩く子たちはきっと、柔道は「せいりょくぜんよう、じたきょうえい」と唱えて実践するものだと思ってやってくるだろう。その時、指導者も道場の先輩も、この言葉を唱えて、行動せざるを得ないはずだ。うれしくてたまらない。こんなに素晴らしいことはないと思うが、いかがだろう。ぜひ手に取ってみてもらいたい。


評者:古田英毅

※ eJudoメルマガ版11月29日掲載記事より転載・編集しています。

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